大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和52年(行コ)29号 判決 1978年10月27日

控訴人

桜井忠良

右訴訟代理人

大田直哉

被控訴人

梶木忠方

被控訴人

吉川義雅

右両名訴訟代理人

米田泰邦

主文

原判決を取消す。

被控訴人らの請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実《省略》

理由

<前略>

二右に認定したとおり、森田、川端と田原本町との間の本件廃川敷周辺土地の売買契約は地方自治法九六条五号にもとづく「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」第三条による議会の議決を効力発生の条件とする契約に該当するところ、昭和四八年一月二〇日に行われた本件売買契約に先立つて行われた昭和四七年一二月二二日の定例議会における特別議決においては、売買代金は六、五六五万五〇〇〇円とされていたのであり、実際に行われた売買の代金はこれに三六〇万円を加えた金額ということになるから、議決の内容と実際に行われた売買契約との間にはそごがあるといわなければならず、右三六〇万円の支出については特別議決を経ていない瑕疵があるというべきである。しかし、控訴人は、「昭和五三年三月二五日の議会において右三六〇万円を含めた売買につき追認する旨の特別議決がなされた。」旨主張し、前記認定の事実、成立に争いのない乙第一九、第二〇号証によると、田原本町では、右三六〇万円の支出当時これを売買代金の一部とは考えていなかつたので、補正予算に計上するにとどめ、三六〇万円に関し特別議決を経なかつたが、昭和五二年一〇月一七日言渡の本件判決により三六〇万円は売買代金の一部であると認定され、その支出手続の瑕疵が指摘されたところから、町長である控訴人は、昭和五三年三月一一日開催の議会に、三六〇万円の支出、その後に取得した廃川敷地の買取契約をも含め、町民運動場用地取得の全体について改めて議会の追認の特別議決を求める議案を提出し、同月二五日その旨の特別決議をえたことが認められる。ところで、地方公共団体の長は当該地方公共団体を代表してその事務を管理執行する権限を有するのであるが、地方自治法九六条一項五号は条例で定める契約については当該地方公共団体の議会の議決を要するものと定めている。その趣旨は、右のような契約は地方公共団体ひいては住民に与える影響が大きく、その他その契約により特定の者が利益を受けることがありうるから、住民の代表機関である議会においてこれらの事柄を個別に審議したうえ、長はその議決に従つて執行すべきものとするところにあつて、長は、右契約については議会の議決を経ないかぎり地方公共団体を代表する権限を有しないものと解される。したがつて、長が右契約について議会の議決を経ないでこれを締結したときは、右行為は無権限の行為として無効になるのであるが、のちに議会が右行為を追認する旨の議決をしたときは、長のした無権限行為は遡つて有効になるものと解すべきである。けだし、議会において叙上の点を審議して長に当該権限を付与することを相当とするのである以上、その議決が事前にされたと事後にされとにかかわらず等しくその効力を認めても叙上の法の趣旨に反しないからである。そうすると、前記追認の特別議決により右三六〇万円の支出部分について事前に特別議決がされていない瑕疵は治癒されたものということができる。

この点につき、被控訴人らは、「三六〇万円の支出は、別の名目で議会の承認のもとにされているのであるから、のちにこれを代金の一部として追認する旨の特別議決をしても、違法な支出が適法になるわけがない。」旨主張するが、前記認定の事実に徴すると、三六〇万円を含めた本件売買の価格に格別不当な点はないのであり、ただこの三六〇万円を代金の一部とみるか否かについて、当時町当局はこれを代金の一部とみなかつたために特別議決を経る手続をとらなかつたものにすぎないと認められ、むしろ、外形上三六〇万円の支出は売買契約と一応別個の理由にもとづいているから、これを代金の一部とみなかつた町当局の見解も全く理由のないものともいいがたく、本件において町当局が当時ことさらに売買代金を圧縮し特別議決をうることを容易にしようとする等の意図を有していたものと認めるに足る証拠もないから、のちにこの三六〇万円を代金の一部とみる立場からされた追認の特別議決の効力を否定しなければならない理由はないというべきである。これに反する被控訴人らの主張は採用しない。なお、被控訴人らは、「控訴人が本件三六〇万円を代金の一部と主張することは控訴人本人の宣誓供述に反する信義則違法の主張である。」旨主張するが、右主張は、すでに述べたところに照らして採用することができない。

三そうすると、控訴人のした三六〇万円の支出は適法に帰したということができるから、違法支出であることを前提とする被控訴人らの請求は、その余の主張について判断を示すまでもなく、失当として排斥を免れない。<以下、省略>

(朝田孝 富田善哉 川口冨男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例